欧州から学ぶ日本不動産市場の見通し
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本日は、利上げを先行した欧州の不動産市況の話題をご紹介したいと思います。これは、今後の日本の不動産市況を予測する上でも重要なデータになります。
不動産リスクは、国際的に議論されているリスクの⼀つでもあります。⽶欧の不動産市場は調整⾊が強まっており、その影響は、同市場に対するエクスポージャーをもつ邦銀や、世界分散投資を⾏う不動産ファンドを介して、日本の⾦融システムにも及び得ます。これまでのところ、日本国内の不動産市場に⼤きな調整圧⼒はみられないものの、都⼼の商業地区では注意すべき変化も徐々に浮き彫りになってきています。内外の不動産リスクが⾦融システムに及ぼす影響を的確に評価することが重要になっていきています。
そんな中、一つの指標となりそうなのが欧州中央銀行(ECB)の動きです。今月、米国に先行して利下げに踏み切ったものの、追加の金利引き下げは急がない姿勢を表明しました。金利の高止まりにより賃料の減少、建設コストの増加という「三重苦」が重くのしかかり、銀行の商業不動産向け融資では不良債権化の兆しが出てきてしまいました。それを匂わすトピックとして、欧州を代表する金融都市フランクフルトの摩天楼がそびえるマインハッタン地区で、ある超高層ビルの動向が話題になっています。40階以上の高さを誇る「トリアノン・タワー」からテナントが退出し、所有する韓国の不動産ファンドのローンが債務不履行に直面したからです。
世界の不動産市場では米国と中国の低迷に関心が集まっていますが、こうした状況もあり実は欧州にとって対岸の火事ではありません。経営コンサルの独ファルケンシュテーグによると、ドイツにおける不動産関連の企業倒産は1〜3月期だけで630件と前年同期比で3割増と一気に膨らんでいるそうです。企業の株価を見ても低迷が明白です。ドイツの不動産大手ドイチェ・ボーネンは年初から売りが優勢となっており、2023年末比の騰落率は今月20日時点で26%にまで下がっています。欧州の主要600社で構成するストックス600は同期間で8%高となっており、残念ながら不動産株から投資マネーが流出しています。
オフィスなどの商業用不動産が苦境が背景に。。
考えられる理由は主に3つあります。
①金利高による資金調達コストの上昇
②賃料収入の落ち込み
③設備など建設コストの高騰
独vdpリサーチによると、オフィス価格の下落率は23年10〜12月期にドイツが前年同期比13%、米国が16%となっています。2024年1〜3月期は下落率を縮めたものの、欧米で利上げが始まった2022年のピークからの下げは約2割と米国並みに失速しています。今後の先行きも不透明感が残ります。欧州経済は底入れして景気回復に向かう半面、ECBはインフレ再燃への警戒から追加利下げは急がない方針だからです。vdpリサーチはオフィス価格が2024年末にかけて緩やかに下落が続くとの予測で、ベルリンやハンブルクなど上位7都市の空室率は上昇基調にあります。
市場は最短で9月の追加利下げを織り込むんでいますが、物価次第では12月まで延期の可能性も現実味を帯びています。大幅な利下げ観測は後退し、独不動産ローン金利はECBの利下げ開始後にもかかわらず3%台後半と年初来の高水準まで戻ってきています。問題は不動産市場の動揺が金融システムにどこまで波及するかです。ユーロ圏の銀行融資における商業用不動産の不良債権比率は2023年10〜12月期に4.5%と、1〜3月期の4%を底に反転しています。ECBはオフィスなどの見通しは悪化の一途として銀行の資産劣化に警戒を強めています。銀行監督を担うECBはドイツの複数の銀行に対し、商業用不動産向け融資が焦げつく事態に備えて引当金を積み増すよう要請を決めたそうです。
そしてもちろんこの影響は住宅市場にも出てきています。ドイツなどで底入れの兆しが出る一方、ポルトガルやオランダは急激な利上げでも住宅価格の高騰が続いています。ECBは一部の市場で依然として割高の兆候が見られ、下振れリスクはなお高いと読んでいます。
ユーロ圏の銀行の総融資額に占める住宅ローンの規模は3割ほどで、増加傾向にある日本も2割超と年々増え続けています。オフィスなどの商業用不動産の1割程度より大きい結果です。金融危機の3分の2以上は住宅価格の急騰と暴落の後に生じているだけにリスクの大きさがわかります。こうした状況からも、住宅市場の安定はインフレが長引く欧州で敏感なテーマとなっています。欧州連合(EU)の欧州委員会は先日、フランスやイタリアなど7カ国の財政赤字が過大だとして、財政規律の改善に向けた勧告を表明したばかりです。国債への売りが広がれば、長期金利の上昇を通じて不動産市場の逆風となりかねないだけに投資家は新たな火種を意識し始めています。
日本においても、こうした他国の市況を踏まえると利上げに慎重にならざるを得ない状況です。金融市場と不動産市場は密な関係ですので、山信不動産株式会社では今後の金融政策の動きにも注目していきたいと思います。
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