実際の場所は雑居ビルや分譲マンションの一室、プレハブ小屋など様々で、サービスの利用料金は月額で数百円から数万円と幅があります。銀座の一角に立つ1978年竣工のビルにはその2階に2500社超の本店が集まっており、広さはわずか64㎡というから驚きです。フロアには予約制の会議室が一つあるだけというのも珍しくありません。
しかし、この光景は異様ではあっても、違法性がないのでここまで広がりを見せています。商業登記法は本店所在地の決め方に特段のルールを設けていないからです。住所が現実に存在しない場合や、同じ住所に同じ商号の法人がある場合を除き、原則どこでも登記できます(賃貸マンションで居住用の場合は貸主側やマンション管理規則上でNGにしているケースも有ります)。名義上の貸し借りに法的な問題はないです。
もちろん法律の趣旨に完全に沿っているわけではなく、法務省の見解としても現行法は事務所不要の働き方を想定していないと説明しています。テレワークの浸透や副業の広がりなど社会の変化がこうした現象を加速させた事は間違いありません。
前段でもお話しした様に、バーチャルオフィスの料金は月数百円からなので資金の乏しいスタートアップでも利用しやすいのが特徴です。
仕事によっては地名に付随する信用力も魅力になっています。例えば、美容系であれば「表参道」や「青山一丁目」など、アパレル系であれば「渋谷」「原宿」、海外向けにビジネス展開する企業にとっては「東京」というアドレスは魅力の様です。また、取引先に自宅を明かしたくないフリーランスの女性からの需要も多いといいます。身近なところで我々、不動産業界もインターネットの普及により店舗にふらっと立ち寄ってカウンター接客といった需要も減り、店舗である必要性は以前に比べ減りました。この様に、すでに市民権を得たバーチャルオフィスの活用事例は幅広くなってきています。
逆に一部ではありますが以下の業種はバーチャルオフィスを利用出来ない(登記出来ない)こともあるそうです。
⚫︎古物商許可が必要な業種(リサイクルショップ、古本屋、古着屋等)
⚫︎士業(税理士、弁護士、司法書士等)
⚫︎職業紹介業
⚫︎人材派遣業
⚫︎建設業
⚫️探偵業
国税庁が公表する法人番号データをもとに、東京23区内で登記が集中する建物は、少なくとも296カ所あるそうで、このうち99カ所は住所貸し専門で、4月末時点で計約2万8000社の登記があったといいます。一般に知名度のあるエリアは総合的に人気が高く典型は中央区銀座となっています。1〜8丁目に本店を置く法人は約2万3000あり、このうち少なくとも約5300社、全体の2割強の登記先がバーチャルオフィスとのことです。その他、港区南青山や中央区日本橋室町も2割を超える規模になってきているそうです。今注目の新興のデジタル企業が集まる「ビットバレー」の一角をなす渋谷区道玄坂は3割に達しているそうです。日経新聞調べによると都内のバーチャルオフィスを使ううちの1割強の代表者居住地が首都圏外という調査結果にも驚きです。昨今、「地方にいながら都心の住所でビジネス運営」「東京進出の企業に最適」などインターネット上では地方企業をターゲットにしたバーチャルオフィスの広告が目立ってきました。こうした地方を拠点にする会社のバーチャル東京支店も数多くあります。
こうしたサービスには危うさもはらみ、気軽に事務所住所を登記用に使用出来る手軽さから廃業後もそのままにしてあるケースも多いいといいます。名義上のオフィスだったマンションの一室には2024年4月末時点で389法人の登記が残ったままだそうです。実態と異なる表示が横行すれば、トラブルが生じた際に対応が難しくなる危険性もあり無視は出来ません。さらには、手軽さゆえに犯罪や不法行為の温床になりかねない部分も秘めており、より厳格なルール整備が今後は必要になってきます。貸し手側の審査基準もガイドラインがあるわけでもなくまちまちです。一度契約したのちにその賃借企業がどの様なビジネス展開をしているかなどは継続監視するのも現実味がないです。日本でも犯罪収益移転防止法で、バーチャルオフィスを含む郵便物受取業者に契約時の本人確認や疑わしい取引の届け出を義務づけています。しかし営業の登録・許可は不要なため、実態は不透明なままというのが実情です。
世界を見てみると住所貸しや郵便物の受け取り・転送といったサービスはすでに古い歴史がありかなり普及しています。しかし、こうした運営上のトラブルを未然に回避する施策として、米国は運営事業者と利用者の双方に郵政公社(USPS)への登録を義務づけていたり、英国やシンガポールなども事業者は登録制か許可制にしているといいます。各国が一定の規制を課すのはマネーロンダリングなどの悪用を防ぐためです。企業の租税回避やテロ組織の資金調達の抜け穴になることへの懸念も強いためこうした対応をとっているそうです。
現在日本においては合法的に住所の名義貸しは行えますが、今後こうした問題点をクリアにできガイドラインを整備出来れば本当の意味でベンチャー企業の後押しになるビジネスモデルになります。もっとビジネスの裾野も広がり様々なイノベーション創出に繋がることに期待したいです!
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