
保有不動産が押し上げる企業の純資産
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都内のマンション中古市場において価格が昨年比で38%高となっています。新築の販売価格に押し上げられている状況で予算で絞ってしまうと、実需層にとってエリアを重視すべきか広さや築年数を重視すべきか悩ましいところです。

東京23区の中古マンション価格が3カ月連続で1億円を超え7月の平均希望売り出し価格は前月比1.4%高の70㎡あたり1億477万円で最高値を更新しました。供給が減る新築マンションの代替として、中古マンションの需要が高まっているなかどこまで価格が上昇するのでしょうか?
不動産調査会社の東京カンテイが発表した内容によると、東京23区は15カ月連続で前月を上回り、データが確認できる1997年1月以降の最高値だったそうです。これは、前年同月と比べると38.7%高く買い手の意欲が根強いこともあり、価格が堅調に推移しています。新築マンションの供給が減少していることが一因です。不動産経済研究所によると、2024年に販売された東京23区の新築マンションの販売戸数は8275戸で前年比30.5%減っており、新築マンションの選択肢が減った分の需要が中古マンションへ流れ、相場が押し上げられています。そうした状況から、東京23区では、中古マンションでも1億円を超える「億ション」が珍しくなくなりつつあります。住宅情報サイト「ライフルホームズ」で2025年1〜6月に売り出された中古における億ションの割合は15.5%で、2015年は1.0%、2020年が3.4%とこの5年で急速に拡大しています。都心では中古の億ションの割合が半数を超える区も出てきています。港区は54.5%、千代田区は51.2%と驚異的な数値です。都心の一等地では、築年数が30年もしくは40年を超えても億ションとして売り出される事例が増えているといい立地の資産性が重視されていることを物語っています。
東京カンテイによると、都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)の7月の平均希望売り出し価格は前月比1.7%高の70㎡あたり1億6699万円で、データが確認できる2004年1月以降の最高値を更新しています。国内外の富裕層による投資資金が流入し、足元の株高による資産効果も追い風のようだです。一方、調査対象の主要都市では7月に下落するエリアも少なくなかったようです。横浜市は前月比1.3%安の4324万円、さいたま市は0.3%安の3782万円、千葉市は1.0%安の2583万円、神戸市は0.5%安の2704万円、名古屋市は0.2%安の2907万円といずれも下落しており、地方都市で言えば大阪市は2.1%高の5264万円で上昇しています。
値上がりだった東京23区と大阪市は、いずれも資産性の高さや将来の価格上昇への期待から投資資金が流入しやすいエリアという評価のようです。主に実際に住むことを想定した実需層が購入するエリアと対照的な結果となっており、投資マネーが集まりやすいエリアと実需主体のエリアで価格動向の二極化が進む可能性もありそうです。
そうした中、価格高騰に頭を抱えている個人消費者がいる一方で、不動産を多く保有している企業にとっては純資産が上昇しています。
上場企業が保有する不動産の含み益は2025年3月末時点で29兆円と前の期から7%増えており、開示が始まった2010年3月末以降で最大を記録しています。不動産価格や賃料が上昇していることが背景にあり、時価総額が含み益を考慮した純資産を大きく下回る企業では、皮肉にも株主から不動産の含み益を企業価値に反映するような経営努力を求められる可能性が出てきています。含み益が膨らんだ主因は不動産価格の上昇が大きいです。国土交通省が公表する不動産価格指数をみると、商業用不動産の直近値は2015年末比で3割上昇しており、2025年1月1日時点の公示地価は全用途の全国平均が前年から2.7%上昇し、バブル崩壊後の1992年以降で最高の伸びとなっています。
含み益が最も大きかった企業は丸ノ内を中心に好立地に不動産を多数保有している「三菱地所」で5兆456億円でした。その他、三井不動産と住友不動産の大手3社で計12兆9259億円と全体の4割超を占めていることにも驚きです。旺盛なオフィス需要やインフレによる管理コスト上昇を背景に、各社は賃料を引き上げていおり三菱地所は丸の内エリアを中心に増額しており「増額幅は5〜20%程度」といいます。
不動産以外の業種で駅前の物件を多く保有する鉄道が目立っています。JR東日本の含み益は1兆8065億円と前の期から11%増えています。賃貸等不動産の対象物件が増え都心部の大型物件が含み益の増加に大きく寄与しているようです。保有する不動産の売却や開発で資産を入れ替え、回転率を向上させる方針で、資産入れ替えで得た資金を成長分野に再投資する「回転型ビジネス」にシフトしています。不動産の時価を考慮した資産の回転率や収益率を上げられるかが問われるようになっていると指摘する声もありますが株主からも運用への厳しいメスが入る企業は少なくないです。当SANSHINpicks内でも度々取り上げている「西部ホールディングス」は含み益が2000億円を超えています。同社は不動産の保有を前提としていましたが、一部資産を流動化して再投資する事業モデルへの転換を図っており、最近では主力の複合ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」を売却し話題になっています。不動産の含み益は実際に売却するまでは実現しないため、企業の貸借対照表には反映されません。仮に含み益が全額実現したと仮定して、含み益に実効税率を乗じた額を自己資本に加算しPBR(株価純資産倍率)を計算すると、40社以上でPBRが1倍を下回ります。こうした企業では不動産の価値が株価に十分に反映されていないといえ、株主から改善を求められる可能性があります。実際、米投資ファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントは6月に株式を保有する住友不動産に対して株主提案を出しており、エリオットは経営改善策の1つに賃貸マンションの不動産投資信託への移管をあげています。不動産価値が上昇している局面ということもあり、不動産大手にアクティビストは着目するようになってきています。不動産含み益の大きい企業の株価は年初来で東証株価指数を超過している状況で、投資家は時価総額に対して含み益が大きい銘柄を物色してはじめています。今後も、企業は不動産の含み益の活用の道筋を投資家に示す必要が出てきそうです。
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