日銀は長期金利の上限を今のように厳格に抑えると金融市場の変動に影響が出るおそれがあると指摘し、今回決めた運用の柔軟化によって、こうした動きを和らげることが期待しています。これについて植田総裁は「為替をターゲットとしていないことに変わりはないが、金融市場の変動をなるべく抑えるという中に為替市場も含めて考えている」と述べ、金融緩和策を柔軟に運用する目的の1つに為替市場の変動を抑えることがあるという考えを示しました。外国為替市場では今年1月に1ドル=127円台で取り引きされていましたが、その後、急速に円安ドル高が進み、円相場は6月下旬に1ドル=145円台まで値下がりしました。その後、やや円高方向に戻しましたが、欧米の中央銀行が利上げを相次いで実施する一方で、日銀が金融緩和を続ければ再び円安が加速し、物価が一段と上昇することも懸念されていました。そうした動きからも、今回の日銀の決定で円安の流れが変わるかどうかも注目されます。
そして、我々消費者にとって気になるのはやはり「住宅ローン」への影響です。以前、長期金利の上限を0.5%まで上げた際にも取り上げましたが、今回も同様の動きになるかと思います。長期金利は、0.1%〜0.2%上昇は否めません。しかしながら、住宅ローンのシェアとして大きな割合を占めている「変動金利」は短期金利に影響を受けるため大きな動きにはならないと思います。
とはいえ、長期金利が仮に上昇すれば政府が発行する国債の利払費の負担が重くなり、低金利に頼った財政運営も修正を迫られる可能性はあります。植田総裁の考えとしては、マイナス金利にもついても言及しており、解除までにはまだだいぶ距離があるとの考えを示していました。その他、ETFの買い入れ措置も現状通り継続しそうです。今回の発表でテコ入れをしたのは大きく「長期金利の上限」だけでしたので為替の動き次第ではまだまだ二の手、三の手を備えていないと最後の砦の短期金利にまで影響が及ぶことも可能性は「ゼロ」では無い気がします。
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