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本日は、日本の不動産株の値動きから読み解く日本経済の見え方に話題についてをご紹介したいと思います。
以前より当ブログでもご紹介してきましたが、世界の投資家が日本の不動産株への関心を強めている昨今、本当の意味で「脱デフレ」を実現できるか⁈さらに注目が集まってきています。停滞する不動産投資信託(REIT)相場が映すように賃料上昇の機運は鈍い動きをしていますが、不動産価格自体は急速に高騰しています。そうしたなか、不動産株は緩和が生んだ市場のゆがみが正常化に向かうかを占う指標になるので株の値動きからも眼が離せない状況です。業種別東証株価指数(TOPIX)の「不動産業」は今月上旬の時点で3月末比20%高い状態を推移しています。上昇相場に出遅れていましたが日経平均株価(同11%高)を8月後半に逆転、今月6日にも日経平均が小幅に下落するなか、驚いたのは「三菱地所株」が1.2%高と強さを見せていました。日本で内生的なインフレが定着すれば、オフィス賃料も上がりデベロッパーが持つ不動産の価値も高まるとみられていますので将来的な期待値を表しています。
とはいえ、不動産の収益性回復は道半ばです。仲介大手の三鬼商事によると、東京都心5区のオフィス平均賃料は8月に前年同月比2.4%下落しており、下げ幅こそ縮むものの上昇に転じて賃料が引き上がっていくような力強さまでは感じられません。企業物価と消費者物価は8月にいずれも同3.2%上昇しているなか、インフレ耐性があるどころか、足元では十分な価格転嫁すらできていない可能性があります。こうした状況を見透かすのが上場REIT市場だと思います。東証REIT指数は3月末比で3%高どまりで、最近の不動産株高に乗る様子は見られない状況にあります。上場REITの1口当たり分配金は足元で新型コロナウイルス禍前の2019年末の水準にまでは回復しました。ただ内訳をみると賃料収入からなる巡航利益は5%ほど減り、保有する不動産の売却益で補っているのが実情で本質的な復活ではないです。
怖いのが、不動産売買市場においては「バブル」の影がちらつくほど急速に高騰しています。スイス金融大手UBSは世界の主要25都市を対象に住宅価格に対する平均年収や賃料、国内総生産(GDP)に対する住宅ローン額の比率などから総合的な「不動産バブル指数」を算出しており、先月公表の2023年版では東京がスイスのチューリヒに次ぎ、2番目にバブルリスクが高い都市と発表しました。2022年の9位から急浮上しています。不動産経済研究所によると、東京23区内の新築マンション価格は1〜6月に平均1億2962万円で、前年同期比6割高を記録しています。都心の住まいは多くの人にとって手の届かない存在へと着々と進んできています。
では、なぜ高騰を持続しているかというと不動産価格を押し上げているのは海外マネーだからです。国内の不動産投資額は1〜6月に前年同期から4割増え160億ドル(約2.4兆円)で、世界全体の投資額が半減するなか日本市場への集中が鮮明となってきています。不動産ファンドの待機資金は2022年末時点で4278億ドルと過去最高レベルに積み上がっており、そうしたマネーを引き寄せるのが世界でも数少なくなった日本の低金利環境にあります。東京の上位オフィスに投資した場合の利回りは2.3%程度と主要都市で突出して低いです、しかし、そこから長期金利を引いた「イールドスプレッド」は上海と並んで大きく、資金調達コストを考慮すると利ざやが稼ぎやすい環境なのです。ロンドンや香港では利ざやがマイナスになっている状況です。いかに、日本国内が低金利かを表しています。2022年にバブルリスクが最も高かったトロントやフランクフルトは金融引き締め効果で住宅価格が急速に落ち込み、いずれも2023年版では「過大評価」の水準にまで調整しています。
他国の事例を考慮すると、物価の適度な上昇と経済活動の拡大が続く「好循環」の定着を目指す日銀にとっても難儀な問題です。収益性が高まらないなかで金利上昇がマネーの退潮の引き金となれば、不動産価格は落ち込みかねないからです。冒頭でもお話しした様に「本当の意味で」脱デフレであるかというとまだ日本は疑問符がつき、健康的インフレ判断には至らないからです。正常化を適切に進められないと利上げしても通貨安が止まらない悪循環に陥る恐れもあります。
2006年は脱デフレ期待が高まり海外投資家が日本の「構造改革」への期待を高めるなど、現在と似通った環境だった過去があります。不動産株は同年7月に日銀が利上げに着手しても上昇基調が崩れなかったが、翌年に入ると後のリーマン・ショックにつながる米国の住宅市場の変調を機敏に嗅ぎ取り、下落に転じました。日本が長引く緩和依存から脱し、適度なインフレが定着する「普通の国」に戻れるのかどうか、不動産株はその判定基準になっています。
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