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本日は、「住宅ローン」に付随する団体信用生命保険で新たな試みがスタートする話題についてご紹介したいと思います。
昨今、マンション価格の高騰で購入検討自体を断念されたり、購入する際も共働きご夫婦の場合は「ペアローン(夫婦二人がそれぞれ債務者になる)」での資金計画需要が増してきています。
そんな中、銀行一部の取り組みで安心して購入の決断が出来るよう団体信用生命保険の新たな試みとして、ネット銀行や大手銀行が、夫婦で住宅ローンを借りる「ペアローン」の開拓に力を入れ始めています。PayPay銀行やりそな銀行は2024年、加入者が死亡やがんなどで返済ができなくなった場合に、配偶者のローンも含めて残高をゼロにする団体信用生命保険を導入します。通常の団信よりも上乗せ金利は大きくなりますが、増える夫婦共働き世代に照準を当てた商品で顧客を獲得する狙いがあります。ペアローンは1軒の住宅を購入する際に、夫婦どちらかが組む単独の住宅ローンではなく、夫婦それぞれがローンを組むことで借入額を増額出来るメリットがあり、昨今の共働き夫婦には需要が増えてきている組み方です。夫婦が互いに相手の連帯保証人になる場合が多く、都心部などの住宅価格が高止まりする中で、単独では手が届きづらい物件を購入する目的で利用が増えてきています。
しかし、そこには注意点もあり、従来の団信では片方が死亡や病気などで返済が難しくなった場合、保険が適用されるのは働けなくなった人の借り入れ範囲のみとなります。ですので一緒に組んでいる配偶者のローン残債は残ってしまいます。共働きの場合は債務が残る配偶者も子育てなどのため転職や時短勤務で給与水準を下げなければならないケースも多く、返済負担が実質的に大きくなることがある点に注意が必要でした。しかしそんな中、ネット銀行の「PayPay銀行」は6月、ペアローン向けの団信として新たに、死亡やがんで配偶者の残債までゼロにする保険の提供を始めると発表しました。同様の団信の提供は邦銀で初めてとなる見込みで、カーディフ生命保険の保険商品となります。通常の団信よりも上乗せ金利は大きくなりますが、配偶者のリスクまでカバーすることで需要を取り込むことが出来そうです。がん以外の病気の場合は、働けない状態が12カ月続くと借入残高をゼロにする内容も付帯しています。
その他、りそな銀行と埼玉りそな銀行も10月から、がんと診断された際などに本人と配偶者が抱えるローンの残高をゼロにするペアローン向け団信の提供を始めるとのことです。
これもかなり画期的な取り組みで夫婦のいずれかががんになった場合や死亡時に世帯で返済に窮する事態を防ぐ事が出来ます。住宅価格の高騰に伴うペアローンによる高額借り入れが増加するなか、第一生命保険も同様の保険商品を開発し、銀行向けに売り込みを始めています。
ペアローンは特に若い世代で利用が広がっていおり、三井住友トラスト・資産のミライ研究所の2023年の調査によると、20~29歳では22.2%がペアローンを利用している結果が出ています。若い世代ほど利用率が高く、全世代の8.9%に比べると割合が突出しています。ペアローンで借りる金額(中央値)は20~29歳が3333万円と、単独ローンに比べて38%多く、ペアと単独を比べた増加率でも、20代が最も高い結果となっており若い世代の住宅購入や住宅ローンへの関心の高さがわかります。
しかし、借入金額を大きくする需要が高まっている一方、全体的には住宅ローン市場全体は伸び悩んでいるのも現状としてあります。住宅金融支援機構によれば、2000年代以降で国内銀行の住宅ローン新規貸出額は大きく変化しておらず、ネット銀行の台頭などで競争が激しくなる中、シェアを拡大するには需要に沿った住宅ローン商品を取りそろえる必要が出てきています。ペアローンむけ団信は時代の流れにあった商品で、一定の需要が見込めると思います。今までのネット銀行などは金利の引き下げで競争を激化してきましたが、新規顧客獲得が飽和してきている現状を打破すべく今後は保障内容でも差別化を図る流れが出てきそうです。
生活の基盤となる住宅を担保にとる住宅ローンは銀行にとって優良な融資先ではありますが、住宅価格が高騰するなか、延滞などの比率はじわりと上昇しているの懸念点もあります。住宅金融支援機構によると、フラット35で実質的な貸し倒れや延滞などになった債権の比率は2022年度に0.61%。3年前に比べて0.11ポイント上昇している結果となってしまっています。同機構によれば、住宅ローンのリスクとして金利上昇局面での延滞増加を挙げる金融機関は2023年度に46.2%と、前年度から6.5ポイント上がり、大きな金額を借り入れるペアローンで団信を充実させるのは、物価と金利の上昇局面で銀行自身のリスクを抑える意味合いもありそうです。
今年は特に、「マイナス金利」の解除や年末に向けた「ゼロ金利解除」など金利上昇リスクは無視出来ない潮目にきていいますので各銀行も先を見据えた商品作りが今後も活発化しそうです。
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