そして、そのマイナス金利政策の解除に向けて昨日、日銀内外で最終調整を始めました。現在の短期の政策金利はマイナス0.1%。これを0.1ポイント以上、引き上げて短期金利を0~0.1%に誘導する案が有力となっています。2016年2月に開始したマイナス金利政策はこれで終了するかたちになります。
日銀のマイナス金利政策は金融機関が日銀にあずける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用するしくみで、大規模緩和の象徴的な政策とみなされてきました。日銀が解除すれば世界でマイナス金利政策を採用する中央銀行はなくなることになります。
最終判断の決定的な根拠としては、連合が昨日発表した2024年の春季労使交渉の第1回回答の集計が大きく、賃上げ率は平均5.28%となり、焦点の中小企業の賃上げ率も4.42%と32年ぶりの高い水準となったことです。ベースアップも3.70%(ベアと定期昇給を明確に区別できる654組合が対象)に達し、賃金の持続的上昇で日銀が目指す2%の物価目標を安定的に達成できる見通しがたちました。
日銀が春季交渉を「大きなポイント」と位置づけて重視してきたのは、物価上昇の持続力と密接に絡むからです。賃金が上がれば個人消費に弾みがつくうえ、人件費の増加分はサービス価格への反映を通じて物価の押し上げ要因になります。植田総裁は先日の国会答弁で春季交渉の結果を踏まえて判断する考えを示したうえで「賃金と物価の好循環がどのくらいうまく回っているか点検している」と発言しました。マイナス金利解除に向けた見極めが最終段階に入っていることを示唆していたと思います。
日銀はマイナス金利政策の解除とあわせて大規模緩和の柱となってきた長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃する方針のようです。現在は長期金利の上限のめどを1%としていおり、発表後国内の債権市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが上昇し一時0.795%までいき2023年12月上旬以来の高水準を付けました。この発表を受け、マイナス金利解除の期待感から債権売りが広がりました。今後は、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の新規買い入れも終える見通しになりそうです。2023年末以降、日銀はマイナス金利の解除に向けた地ならしをメディアを通して進めてきました。マイナス金利を解除しても「緩和的な金融環境を維持していく」と解除後の政策運営に言及しており、政府内にも3月解除の容認論が広がってきています。財務省としても4月まで待つ必要がなく、3月に解除するのが望ましいとの見方が強そうです。世界的な動きとして、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など世界の中銀はインフレ抑制へ急ピッチで利上げしてきました。2007年2月の利上げを最後に一貫して金融緩和を続けてきた日銀がマイナス金利を解除すれば、企業や家計にとどまらず世界の資金の流れにも大きな影響を与えることになります。
しかし、今後注目されるであろう「追加利上げ」に関しては、まだ慎重な判断が求められます。「GDP」壁があるからです。折しも、2月末に発表された1月の鉱工業生産指数が大幅に下振れしたことで、2024年1〜3月期のGDPは大きくマイナスになる可能性が出てきています。足もとの国の経済全体の需要と潜在的な供給力の差を表す「需給ギャップ」はマイナス1%以上に拡大するかもしれないのでこの乖離によっては足踏みすることになるからです。政府も、この「需給ギャップ」に関しては重要視していて、デフレ脱却から逆行するかのような需給ギャップの結果は、追加利上げの妨げになりそうです。
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