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市場創設25年のREIT岐路に立つ

投資

山田 恵二

筆者 山田 恵二

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本日は、市場創設から25年の歳月が経つ「REIT(不動産投資信託)」の話題についてご紹介したいと思います。現物不動産の価格高騰を横目になかなか市場からの評価は厳しい状況のようです。SANSHIN picks内でも過去何度か取り上げてきたREITですが、今までとは状況の違う経済背景に大きな変化が出てきています。

背景には成長を阻む日本特有の構造があります。市場創設から25年、REITは今岐路に立っています。投資家が売買するのは投資法人の投資口で、物件の所有権を直接得られるわけではありません。投資主は株式会社の株主総会にあたる投資主総会で議決権を行使し、株式会社の定款にあたる規約の変更や役員の選解任などを決議する立場にあります。例えば、東京都新宿区の大型ホテル「ハイアットリージェンシー東京」はジャパン・ホテル・リート投資法人が保有しており、真っ赤な観覧車で知られる大阪・梅田の商業施設「HEP FIVE(ヘップファイブ)」は阪急阪神リート投資法人が保有者に名を連ねています。

日本では2001年3月に東京証券取引所がJ-REIT市場を開設し、同年9月に2銘柄が上場しました。そして現在、58銘柄が上場しています。2023年以降、REIT市場は異常な状態にあります。58銘柄の時価総額の合計は16兆円、保有する不動産価格は取得時ベースで合計約25兆円にまで上昇しているのに対し、実際の価値を下回る水準で取引されているのが現状です。

こうした割安さを示す指標が「NAV倍率」です。株式市場でいうところのPBR(株価純資産倍率)に相当します。現在のREIT市場では、NAVが1倍割れが常態化し、9日時点で1倍を上回るのは58銘柄中1つもないという由々しき事態です。理論上は会社を続けるより解散した方が株主価値が高いと評価されているに等しいということです。

一方、日本の株式市場は日経平均株価が6月に史上初の7万円台の大台に乗せており、人工知能(AI)銘柄の乱高下を繰り返しながらも高値圏での推移が今なお続いています。東証は上場企業に資本効率の改善を促し、東証株価指数(TOPIX)の銘柄を絞り込む改革を進めるなど、市場の姿を変えてきました。

しかし、REIT市場は対照的です。割安さに目をつけた投資家の流入は目立っておらず、今だに再編も広がっていません。かつて割安さに注目した投資家もいて、2025年にはシンガポールの投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズがNTT都市開発リート投資法人と阪急阪神リート投資法人へのTOB(公開買い付け)を相次ぎ発表し話題になりました。買い付けの目的は「純投資」とした上で、投資口(株式に相当)の取得を試みたが失敗に終わりました日本ではREITそのものは不動産を保有する「箱」にすぎません。投資信託法で従業員の雇用が禁止されており、物件の売買や入居者との賃料交渉などは外部の資産運用会社に委託しています。運用会社には不動産会社や金融機関、鉄道会社などの「スポンサー」が出資する仕組みをとっています。3Dのケースでは買い付けのプレミアムが6〜7%程度と物足りなかった側面もありますが、それぞれのスポンサーであるNTT都市開発や阪急阪神不動産が投資口の取得に動いたことも大きかったです。究極の買収防衛として、スポンサーによる買い増しという禁じ手が許されており守られてきました。

25年前、日本の不動産市場はバブル崩壊で凍り付いていました。そんな不動産市場をREIT市場の創設により不動産の証券化を通じて少しでも資金を流入させる狙いがありました。市場を支える投資家には、安定した分配金を求める地方銀行が流入し、年金の代わりに生活費の足しを得たい個人が買い手になり一躍注目される金融商品へと変わりました。投資口価格の上昇を狙うよりも、安定を求める市場観が形作られていたのも大きかったです。現行制度の下ではスポンサーの垣根を越えた再編が難しく逆に足かせとなってきています。

REITの運用会社も手をこまねいてきたわけではありません。物件改修で賃料を引き上げて「インフレ耐性」を高めつつ、低利回り物件は売却して投資家への還元にまわしてきました。不動産証券化協会によると2025年のREITによる物件譲渡額は2024年から2割増の8246億円と過去最高だったデータもあります。それでも急速な金利上昇に対し、個々の努力では市場全体の低迷を覆すには限界があるというわけです。背景にあるのは、不動産価格の上昇による利回り低下です。都心の優良物件ほど価格が高騰し、投資として成立しにくくなっています。その結果、REITはやむを得ず地方へと投資領域を広げています。もっとも、この動きは単なるポートフォリオの変化にとどまりません。REITの成長モデルそのものに影響を与える構造変化ともいえます。REITが地方へ向かう最大の理由は、都心物件の利回り低下です。上場企業が資本効率改善に向けて変貌を遂げた一方で、REIT市場の骨格は25年前から変わっていません。

それに対し、米国のREITが時価総額を拡大する転機になったのが、1990年代に広がった「UPREIT(アップリート)」と呼ばれる仕組みです。税制上の優遇措置により、優良な不動産をREIT市場に呼び込む経路が広がりました米国の経験が示すのは、REITを単に不動産を保有する「器」にとどめず、市場環境にあわせて変化することの重要性というわけです。日本でもREITによる物件の開発を認めるなど成長資産を組み入れやすくする制度改革の余地があります。備品のレンタルなど賃料収入以外も収益計上できるようにして、収益源を多角化する制度改革が必要です。当然米国のように、M&Aによる業界再編を望む声も多いです。

米国のREITは異なる発展を遂げています。M&Aが活発で、割安であれば買収や非公開化によって退出する例もあります。米国REITの時価総額の合計は2020年以降でなんと2割超増えています。日本市場とは違い米国REIT市場の成長は新陳代謝が激しくその結果なのかもしれません。米国ではデータセンターや通信基地局、高齢者施設などのヘルスケアといった新たな分野への投資が進み、近年の市場の拡大を支えています。対して日本では前述の通り、制度上の足かせもありオフィスなど伝統的な不動産の比重がなお多い状況です。こうした中、日本でもREITを取り巻く前提は崩れ始めており、長期金利が30年ぶりに3%を上回り、利回りだけでは投資家をひき付けられなくなっています。日本株や海外株と成長性で比較され、投資資金を奪い合う環境にさらされています。四半世紀を経てREIT市場全体を再設計すべき時を迎えていのかもしれません。

不動産投資においては、取得価格に対してどれだけの収益(賃料)が得られるかが重要です。「都心は高すぎて買えない」、「地方は買えるが成長力が低い」このジレンマの中で、REITは難しい選択を迫られています。今後の分岐点は明確です。「短期利回りを優先するか」「長期成長を取りにいくか」この判断によって、REIT間の二極化はさらに進むと考えられます。不動産市場がインフレ環境に入る中で、どの資産を持つかという「質」の重要性は、これまで以上に高まっています。REITにとっては、まさに戦略の再設計が求められる局面といえるでしょう。



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