本日は、不動産取引における「心理的瑕疵」いわゆる「人の死」の告知義務についてガイドライン最終案が国土交通省より先日8日に公表されましたのでご紹介したいと思います。
ブログをご覧の皆様も、「事故物件」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。何等かの理由で住人が死亡した経歴のある物件、特に殺人や火災、自殺などの死亡原因のものを指すことが多いのですが、明確な判断基準はありません。しかし、こうした内容は「心理的瑕疵」にあたるとされ、物件の売主や貸主には告知義務があります。不動産取引で知っておきたい「心理的瑕疵」について、概要や心理的瑕疵に対する告知義務について今まで曖昧だったため経緯もあり、線引きをガイドラインとして作成する運びとなりました。
最終案ガイドラインでは、人の死に関する事案が取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、告知の義務が生ずるとしました。「人の死」については、自然死や日常生活の中での不慮の死については告知の必要がないとしたほか、賃貸借取引については、対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死等以外の死、自然死等で特殊清掃が行なわれた死については、事案発生から3年間が経過した後は告知の必要はないとしました。また、賃貸借・売買取引ともに、対象不動産の隣住戸や日常的に使用しない集合住宅の共用部分で発生した自然死以外の死などについても告知の必要はないとしました。
告知にあたっては、事案の発生時期(特殊清掃等が行なわれた場合は発覚次期)、場所、死因、特殊清掃が行なわれた場合はその旨を告げるものとしました。告知の必要がない事案でも、事件性や周知性、社会への影響が特に高い事案や、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は告知する必要があるとしました。その調査にあたっては、売主・貸主に対し、告知書等に過去に生じた事案についての記載を求めることで、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとみなし、周辺住民への聞き込みやインターネットサイト調査などの自発的な調査を行なう義務はないとしました。また、売主・貸主に対しては、事案の存在を故意に告知しなかった場合、民事上の責任を問われる可能性があることをあらかじめ伝えることが望ましいとしたほか、売主・貸主からの告知が無い場合でも、人の死に関する事案の存在が疑われる場合は、売主・貸主に確認する必要があるとしました。
【本ガイドラインのポイント】
①病気、老衰、転倒や食事中の誤嚥(ごえん)といった事故による死亡の告知は不要。 死後、長期間発見されず特殊な清掃が行われた場合は告知する
②殺人や自殺、火災などによる死亡は告知を求める。賃貸物件は3年経過すれば不要とする
③対象は住宅で、居室のほかベランダ、廊下など日常的に使う共用部も含む。
今までもこの「心理的瑕疵」については、様々な観点から定義化出来ないとされてきました。特に遺族心理への配慮や偏見や差別を合理的と認め、助長することになる側面もあり物理化すること自体が本当に難しい事案だと思います。現に各種メディアでは、「心理的瑕疵」や「事故物件」という呼称で悪意無く数多く取り上げられています。
しかしながら、このガイドラインを策定するにあたった目的としてこうした事案における取引トラブルも少なくなく、判例に基づき司法判断に委ねてきている現状もあります。我々不動産業者の立場からすると取引においてガイドライン(ルール)が無い以上は曖昧にせざるを得ない部分もあり説明責任について問われる部分もありました。上記で挙げた3つのポイントはまさに、今までの取引において曖昧化されていた重要な争点ではあったのでこれが策定されたことにより可視化され、告知義務についての判断がわかりやすくなり、心理的瑕疵の対象となる物件取引におけるトラブルが少なくなれば、策定した意味・意義もあるのではないのでしょうか。