近隣国から見る政策金利上昇の考察
韓国銀行は2023年の景気が「後半になれば改善する」と見込んでいるものの、民間のシンクタンク各社は下振れを予想している様です。同年の実質GDPの伸びが1.4%になると予想するLG経営研究院は「金利上昇で証券・不動産市場が振るわず、消費者心理にはマイナス効果を及ぼす可能性が高い」と指摘しています。
個人消費は韓国のGDPの5割近くに寄与しており、高金利は家計に一番ダイレクトに来る負担となります。中でも、住宅ローン金利の膨張が2023年も続けば、深刻な家計状況になり得ます。韓国銀行によると、同国の金融機関の平均貸出金利は2022年11月が年5.64%で、前月より0.38ポイント上がっています。これは、前年同月比では2.41ポイント高い結果です。住宅ローン金利の8割超が変動制で、足元では最大で8%を超えるものも出てきている様です。住宅ローンをはじめとする家計負債は2022年9月時点で1870兆ウォンと、2017年9月より4割増えています。家計負債のGDP比を2021年のデータで比較すれば、韓国が104%で、米国(79%)、日本(64%)をいずれも大きく上回り、加えて金利負担が膨らめば家計の可処分所得は圧迫される事になります。どの国も共通しているのは、生活キャッシュフロー上、「住居費」の占める割合の大きさです。
その結果、2022年10~12月の「民間消費」は前期比0.4%減となりました。新型コロナウイルス対策の行動制限が解除され、景気回復が期待されたが、実際には逆の結果になってしまっている様です。韓国国内でも多額の家計負債が国内消費の回復には重荷になると警戒しているようです。
高金利の背景には、2022年2月にウクライナ侵攻を始めたロシアへの経済制裁による物価上昇を抑え、対ドルで韓国通貨ウォンを防衛するための利上げが大きな要因になっています。韓国銀行は米連邦準備理事会(FRB)と歩調を合わせる形で、政策金利をこれまでの約1年半で過去最低水準の年0.50%から3.50%に引き上げてきました。日本との金融政策の違いはここが大きく異なります。
統計では、韓国の不動産価格は過去5年間で平均8割上がっています。対中関係の悪化や新型コロナの感染拡大で落ち込む景気を支えるため、韓国銀行が低金利政策を採用していたためです。「緩和マネー」が不動産市場に流入した結果、将来の値上がりを見越し、所得に見合わない多額の住宅ローンを組んだ世帯も多く2022から始まった政策金利上昇はダイレクトに影響してきています。韓国はもともと持ち家率が高く低金利時に故実需として購入した人は多かった様です。
韓国銀行は2023年の設備投資や建設投資が前年比でマイナスになると見込んでおり、半導体市況の低迷が足を引っ張り、輸出は0.7%増にとどまると予想しています。日銀の難しい舵取りには、こうした予想のもと行われている部分もあります。しかし、日本も現状の長期金利の上限拡大だけでは制御不能になるのでは無いかと投資家も苦慮しています。現に、再度国債売りが優勢になり、長期金利には再び上昇圧力がかかりつつあります。とはいえ、最後のパンドラ化した「政策金利」上昇にだけは手を出さずに歪みを解消する必要があるかと思います。
一刻も早い金融政策の正常化が求めらる中、今回ご紹介した韓国内での経済状況は全くもって対岸の火事では無い話なので、日銀総裁任期満了に伴う金融政策修正の動向に注目せざるを得ないです。
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