本格化するマイナス金利解除策
本日は、日銀のマイナス金利解除に対する姿勢が現実味を帯びてきている話題についてご紹介したいと思います。
日銀はマイナス金利幕引き作業の「ベストタイミング」を慎重に見極め始めています。金融引き締め方向の政策調整を行うことによるショックを、「実質金利」を持ち出すことにより、少なくとも心理的には緩和することができる面があると考え、会見でも「実質的な金利水準は低い」という発言を強調していました。
将来、マイナス金利政策の終了を決める際にも、経済・市場に与えるショックを小さくするため、実質金利は低水準で推移し続けると強調する公算が大きく、最近の情報発信は、遠からず決まる可能性があるマイナス金利解除への備えが本格化したものと受け止めることもできます。
「日本経済が緩やかに回復しているという姿は継続している」。7〜9月期の実質GDP速報値がマイナス成長になったことについて、植田和男日銀総裁は先週の国会でそう語り、冷静に受け止める姿勢を示していました。
消費者物価の基調的な上昇率が2%目標に向けて徐々に高まっていくという日銀のメインシナリオは崩れていないもようで、日銀は、2024年の春季労使交渉の行方や結果などを見極め、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せれば、以前のブログでもご紹介した様に「マイナス金利政策の解除」を検討するという姿勢を維持しています。
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長年、極めて低い金利が続いただけに、急激かつ大幅な金利上昇が始まるとの受け止め方が広がれば、政府、企業、家計に不安が広がり、経済やマーケットに混乱が起きかねないです。そうしたショックの緩和策のひとつとして、日銀は、実質金利の低さを強調しているようです。実質金利とは、普段目にする金利から人々が予想する物価上昇率を差し引いた値で、金融政策が経済・物価に与える効果を捉えるうえでは、予想物価上昇率を勘案した実質金利が重要というのが日銀植田総裁の考えです。金融政策変更で名目金利が上がっても、賃金も上がるなどして人々のインフレ予想が強まっていれば、実質的な金利の負担感はあまり強まらないという理屈です。
予想物価上昇率には様々な数値があり、厳密な把握は難しいため、物価上昇率の実績値を使って実質金利をとりあえず計算する場合もあります。最近の消費者物価上昇率は3%程度ですが、一方、短期の政策金利はマイナス0.1%、長期金利(10年物国債利回り)は0.7%程度であり、実質金利は短期も長期もマイナス圏との見方が日銀にもあります。マイナス金利政策をやめて短期の政策金利を0%あるいは0〜0.1%程度に上げ、それに応じて長期金利も多少上がるくらいであれば、「十分に緩和的な金融環境」に大きな影響はないという話になります。そうした考えからも以上の点を踏まえると、最近の日銀が実質金利の低さを強調しているのは、マイナス金利解除が近づいている兆候と解釈できます。
過去2回に及ぶゼロ金利政策解除時(2000年・2006年)も、本格的な引き締めではなく、緩和の度合いを調整する程度という意味を強調して実施していたので今回も市場に与える影響も考慮した解除策になりそうです。
とはいえ、非連続的な変化が起きる印象を与えないようにできるだけ円滑に短期の政策金利の引き上げを進めようとしているはずです。もっとも、内外の経済・物価情勢、市場環境、政治動向の不確実性は高いので、金融政策の転換が思わぬ混乱を引き起こすリスクも消えていません。日銀の考えるベストタイミングを決定するには、2024年の春季労使交渉の行方や結果が大きな影響を与えそうです。
年末に向け、日経平均株価も33,000円を超え企業価値も上昇してきていますが、本当の意味で健康的インフレという判断となり、生活水準も並行して上昇しているという判断になれば、短期金利操作が始まるシナリオがいよいよ見えてきたことになります。
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