全国的にも同様の事例は他にもあり、JR北海道は札幌駅の再開発プロジェクトを進めていましたが、完成時期を従来想定の2028年度から最大2年遅らせる検討に入っているそうです。資材価格や人件費の高騰で事業費の圧縮が必要と判断しています。すでに始まっているはずの駅前の商業施設エリアの解体工事にも着手できておらず、こうした一部工事も延期している状況です。
千葉市では2024年度中に着工予定だった市民会館(同市中央区)の移転新築計画が宙に浮いた状況になっています。JR東日本が千葉駅近くに複合ビルを建設し、ビル内に市民会館を新築する計画でした。想定よりも市民会館部分の建設費が膨れあがり、JR東が市に移転の見直しを打診し、市は別の市有地への移転も含めて検討しており、市文化振興課は「(資材など)物価高騰が続いていることはよく承知しており、JR東日本の打診も受け止めた」と話しています。
こうしたビル改修計画の見直しには資材の高騰が大きく影響しています。建設物価調査会によると、2024年4月の建築部門の建設資材物価指数は136.7(15年平均=100)と1990年1月の公表以来、過去最高を記録しており、2021年6月まで100台で推移していましたが、この3年間で30%ほど増加し、工事の先送りの要因となっているそうです。
そしてもう一つの悩みとして、人手不足も深刻な状況です。建設業界では4月から残業時間の上限規制が導入され、特に現場作業を計画・管理する現場監督の人手不足が問題になっています。リクルートの転職支援サービス「リクルートエージェント」の求人・求職データによると、現場監督の2023年の求人数は2013年からの10年間で約31倍に増えたそうです。
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土日や夜間を含めて長時間稼働する建設現場では、現場監督を交代で勤務させるためより多くの人手が必要になっており、求人の伸びに採用が追いついていない状況だそうです。そして、人手不足は人件費の高騰に直結します。労務費の指標となる公共工事設計労務単価は2024年3月に全国全職種平均で2万3600円と、前年同月に更新された2万2227円から6%増えています。これは、約10年前の2014年2月の更新分と比べて46%も高い状況です。建設コストの高まりは建設事業者の受注状況にも影を落とすことになります。日本建設業連合会によると、加盟社の2023年度の国内建設受注額は2022年度比9%増の17兆6646億円で、過去20年で最高額ではあったものの、今後は減少が見込まれると予想されます。
特に大きな指標となっているゼネコン大手4社(鹿島、大林組、大成建設、清水建設)の受注高は2025年3月期に計5兆1100億円と前期(同6兆4642億円)比で21%減る見通しだそうで、清水建設も受注するかどうかを厳格に審査し、資材高騰に伴うコスト負担についても発注者と粘り強く協議する必要があると発表しており、採算性の高い工事を優先して受注せざるを得ない状況になっています。資材高がいつまで続くかも見通せない状況です。最大手の鹿島も資機材の価格は高止まりしており、今後も高い水準が続くと予測しているそうです。残念ながらこうした事態が長引いていることもあり、資材高などを価格に転嫁できない中小企業を中心に、建設業の倒産も増えています。帝国データバンクによると、2023年の建設事業者の倒産件数は1671件と前年比38.8%増、8年ぶりに1600件を上回ったほか、増加率が30%を超えるのは2000年以降で初めてという結果にまでなっています。建設業界は大手事業者が下請けに発注した工事が孫請けに発注される多重構造となっており、中小事業者の減少は大手ゼネコンがさばける工事量の減少や規模の縮小にもつながってしまいます。こうした負の連鎖は、進行中の工事の停滞や先送りを招き、人手を集めるのもさらに困難になりので、今後対極的に見ると都市計画にも影響が出る懸念があります。
都心部は、今後大型の老朽化ビル建替え事業などが多く計画されており一つ一つの事業に対し採算性や事業性で優先順位を付け進めていくことになると思います。そうしたしわ寄せを受けてしまうビルにとって、冒頭で取り上げたような現テナントとの退去手続きや交渉に影響がでてくる事を考えると、なんとも頭の痛い話ではありますが改めて計画を見直す必要も出てきそうです。
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