オフィストレンドは狭小化へ!
特に近年目立つのが、野村不動産の「PMO」や日鉄興和不動産の「BIZCORE」などのブランド名を冠したオフィスです。大手デベロッパーが手掛けた中小ビルは増加傾向で、2024年は21棟と10年前の3倍に増えていることが時代を映し出しています。元々シェアオフィスを借りてでスタートしたスタートアップ企業も徐々に人が増え、小規模なスペースで社内コミュニケーションの取りやすい環境を求めている傾向が増えています。その他、1フロアを貸し切りで利用している企業の中にも、社内セクションを小分けにししっかりセパレートした小規模スペースを作り独自性を設ける会社もあります。
やはり大手デベロッパーの強みでもある好立地の取得がポイントで、野村不動産のPMOシリーズはJR山手線沿いを中心に約60棟を手掛け、今後も十数棟を開発予定のようです。大通りに位置するため眺望や周囲からの視認性に優れ、駅前一等地の大型複合ビルにひけをとらない内装や機能が強みになっています。土地取得から完成まで10年以上かかることもある大型ビルに比べて、コンパクトオフィスビルは投資コスト回収までの期間が短いと言われています。そうした好循環を考え、PMOは築40年以上の老朽化したビルを取得して約2年で新築ビルに建て直し、テナントを埋めてから数年以内に自社グループの不動産投資信託(REIT)や投資家などに売却する仕組みを構築し、人手不足や資材高で大型ビルの工期が見通しづらくなる中、不動産会社としても事業リスクを分散しやすくなるように投資設計していることが特徴です。
これまでのオフィス市場は大型ビルほど機能やスペック、賃料が上がるのが常識とされてきました。企業側も高スペックな人材確保を重要項目と考え、小さくてもハイグレードなオフィスに入りたいという中小企業が増えてきています。PMOも質にこだわる分、坪あたりの賃料は高めに設定しているので利回りもよくなるという仕組みです。スタートアップならではの働き方も需要を押し上げています。日本生産性本部が2025年1月に実施した調査によると、テレワーク実施率は従業員100人以下の企業が9.7%と1001人以上の大企業(25.6%)に比べて大幅に低いという結果が出ており、社員一人一人と対面での交流を重視する経営者が多く、オフィス環境への積極的な投資につながっているようにも感じます。
他デベロッパーもこのトレンドには注目しており、日鉄興和不動産は2017年に「BIZCORE」を立ち上げ、これまでに8棟が完成している実績があります。同社は巨大地震を想定した耐震性に加え、非常用の電源や計3日分の食料・日用品を備えるという防災面にも注力しているのが特徴です。賃料設定は通常のオフィスより1~2割高いのに対し、2月末に完成した東京・西新橋の物件を除くと足元の稼働率は100%と驚異的な結果も出ています。入居テナントが求めるのは内装や機能だけではなく、「立地」も含めてしっかりとしたオフィス環境で働いていることはクライアントに対し信用を得る一助にもなっているようです。東急不動産は2022年に都市型コンパクトビルとして「COERU」を打ち出し話題になりました。商業フロアも入れた複合開発をはじめ、既存建物を壊さずに改修する再生建築にも挑戦しています。その他ビル事業大手のヒューリックは最短3カ月から入居できる「Bizflex」を2021年から展開スタートし新規開業を考える企業からも注目されております。
コンパクトオフィスは成長途中の企業がメイン顧客となるため、一般的な契約期間も3年程度と比較的短いのが特徴です。それでも将来の大型ビルのテナント候補になる可能性もあるだけに、各社大手デベロッパーによる囲い込む動きが広がってきています。しかし、工事費の高騰や訪日客を狙ったホテル開発の拡大で用地も取り合いになっているため、小規模といえども新規開発のハードルは上がっています。入居企業が成長に必要と思えるオフィス環境を訴求して付加価値を示せるのか⁉︎需要が表面化してきている今だからこそ、今後も各社マーケティングを強化しまだまだ知恵の絞りあいが激化しそうです。
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