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建設コスト上昇のなか利上げ0.5%の壁

建築

山田 恵二

筆者 山田 恵二

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日銀利上げのタイミングが気になる中、建設業界では建築費高騰が過去最高を更新する状況になっており更なる物価上昇への影響が気になっています。プロジェクトによっては、当初の計画通りとはいかず採算が合わなった結果頓挫する事案も増えてきています。

建設大手などが加盟する日本建設業連合会が先日発表した2024年度の国内建設受注額は前年度比5%増の18兆6333億円とのことでした。資材価格などのコスト高が続き過去20年で最高値に達してきています。一方で新築着工面積は減少傾向にあり、受発注者が工事費で折り合えずに計画が頓挫しているケースも少なくなく、需要の取りこぼしが深刻となる状況にまできています。加盟92社のデータでは、民間からの受注額は10%増の13兆8977億円で、このうち製造業が11%増の3兆1949億円、非製造業が9%増の10兆7028億円となっています。官公庁からの受注は5%減の4兆6709億円ということです。設備投資など建設需要は堅調で、それによる価格転嫁も進んできています。

金額を押し上げる要因の一つが、民間工事の旺盛な需要にあります。受注額が500億円を超えるオフィスやマンションの工事が全体を押し上げており、生成AI事業のIT関連も好調で、近畿や関東地方で100億円を超えるデータセンターの受注が増えてきているようです。その他、資材価格と人件費といった建設コストの高騰も大きいです。2021年ごろから鋼材を中心に価格が上昇しており、足元では横ばい程度で推移していますが、建設物価調査会の調べでは鉄筋やH形鋼の価格(東京地区)は2021年初頭に比べて3〜4割高い水準にあるというから驚きです。

人件費の指標となる公共工事設計労務単価は、2025年3月に全国全職種平均で2万4852円となっており、前年同月から1000円以上も増えています。約10年前(15年2月)と比べると震災などによる復興支援要因もありますが5割近く高くなっている状況です。このため、2025年3月の東京地区の建築費指数(建設物価調査会調べの速報値、2015年=100)はオフィスビルで136.6と前年同月より4%、マンションは5%それぞれ伸びています。一方で国土交通省がまとめた建築着工統計では、2024年通年の新築着工床面積は前年比8%減の1億200万㎡と、高度成長期の1966年以来の最低水準となっています。足元でも減少傾向は変わっておらず今後も減少傾向が続きそうです。

受注額は伸びるものの、着工面積は減るのはなぜなのか?2つの事象から浮かぶのが、建設業者による機会ロスです。

発注者が依頼した工事費の見積もりが想定を上回り、工事契約が成立しにくくなっているからです。ゼネコンの下請けに入る設備工事会社も人手確保に苦しんでおり設備工事の見積金額が想定より高くても、言い値を受け入れるしかない状況になっています。

経済調査会が下請けの業種ごとに人手不足の状況を指数化した調査によると、設備工事では「やや逼迫」の目安となる4を上回っています。鉄骨や内装が需給が落ち着く状態の3に近づいているのとは対照的で結果として建設計画の見送りが相次ぐ結果となっています。京王電鉄は3月、新宿駅西南口地区の再開発計画で南街区の工事完了時期を「2028年度」から「未定」へ変更すると発表したり、JR中野駅前の複合施設「中野サンプラザ」も工事費の上振れをきっかけに、中野区が再開発計画の見直しを決めニュースでも話題になりました。

こうした事象は全国的にも広がりを見せており、JR北海道は札幌駅直結の再開発プロジェクトで、タワー棟の完成目標時期を2034年度に延期するとし地方都市への影響も増えてきています。岐阜市でもJR岐阜駅北側で野村不動産などが計画中の再開発ビルの規模を縮小するなどし軌道修正を余儀なくしています。



しかし、ゼネコン大手としても失注を少しでも防ごうと、省人化や生産性向上に力を入れる始めています。清水建設や竹中工務店は自動で移動する搬送ロボットを開発し夜間などに資機材を移動し、作業員が運ぶ手間を減らすなど企業努力も行なっています。その他、大成建設では市街地でも超高層ビルをスムーズに解体する工法を標準化しました。粉じんが周囲に漏れるのを防ぐ覆いを最上階に設け、下降させながら解体作業を進めていくことが可能です。大林組や鹿島建設は溶接の手作業をロボットに代替させる技術を開発しています。各社こうした開発は、今後もあるであろう人員確保への布石として必要不可欠になりそうです。それでも建設費高騰が収まらない限り、当面は受発注者の契約合意が難しい状況に変わりません。怖いのはこのまま受注の取りこぼしが続けば、ゼネコン各社の業績に大きく響く可能性がありしいては経済不況にも直結します。

金融面で言えば、世界的には米国の関税政策により国内景気に大きな翳りが出てきているなか日銀の利上げ打ち止め観測も強まってきています。振り返ってみると日銀が過去30年にわたって政策金利を0.5%から引き上げたことがないこともあり、債券市場では利上げに対して後ろ向きな予想が多いのも事実のようです。本日ご紹介したように、建設コストも上昇局面にありますが特に都心の開発需要は強く、ゼネコンがどこまで価格転換しそれに対しどこまで市場がついて来れるのか?すでに我慢比べ状態が長く続いていますがそろそろ限界に近づいてきている気がしてなりません。


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