建築資材の値動きに変化が⁉︎
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国内の建設事業に大きな影響を及ぼしている建築資材の高騰問題ですが、そんな中主要資材の値動きに変化が出てきているという話題についてご紹介したいと思います。この話題、過去複数回に渡り当SANSHIN picks内でも取り扱ってきましたが我々の生活にも間接的に関係してくる問題だけに注目されています。
先日のSANSHIN picksでもご紹介した通り、建築工事の停滞で需要がしぼむなか、今主要資材の値動きが二極化してきています。受注競争で鉄筋コンクリート用の鋼材が値下がりする半面、生コンクリートはこの1年で2割上がっています。過剰な能力を残したままの鉄鋼業界と、先んじて生産集約が進んできた生コン業界で価格交渉力の差が広がってきています。
特に、鉄筋に使う異形棒鋼は値下がりが続いています。鉄鋼メーカーがゼネコンなど大口需要家に販売する価格は東京地区で足元1トン11万500円前後と、1年間で8000円(7%)下がってきます。2022年3月以来の安値で、ロシアのウクライナ侵略で資源価格が高騰する前の水準に逆戻りしました。
主な要因は建築向け需要の低迷にあります。国土交通省の建築着工統計によると、鉄筋コンクリート造の建物の着工床面積は2024年度に前年度比8%減少しており、鉄筋メーカーは人件費や電気代などのコスト上昇を転嫁すべく値上げ交渉を続けてきましたが、引き合いの弱さでむしろ値下げを余儀なくせざるを得ない状況にきています。
一方で、同じく鉄筋コンクリートの材料である生コンは値上がりしています。5月には4月比で約14%上がり、1年間の上昇率は19%にまで上昇しました。原料のセメント代や人件費などの上昇で生コンメーカーが値上げを表明し、ゼネコン側の受け入れが進んでいます。
需要の弱さは同じにもかかわらず、値動きの方向が違うのはなぜか?その理由は生産集約の差にあります。
全国生コンクリート工業組合連合会によると、全国の生コン工場は2024年度末時点で3007カ所と、10年間で12%減少しており、需要が見込めない地域の工場撤退が進んだほか、後継者不足で工場を閉めるケースもでてきています。需要にあわせて供給能力の削減が進んだことで需給が緩みにくくなり、強気の値上げ姿勢を打ち出しやすくなったようです。
地区ごとにメーカーが組合をつくり、共同でゼネコンと価格交渉するのも特殊な文化になっています。各地域に中小メーカーが点在する生コン業界では、かつては企業間で販売量を競うのが常とされてきました。しかし、出荷全体が落ち込むなかで、利益を無視して販売量を増やすという戦略は通用しなくなってきているようです。企業別での営業に比べ交渉力が増すうえ、メーカー同士の過剰な値下げ合戦も避けられます。生コンは工場で練り始めて90分以内に工事現場に届ける必要があるため大量につくって保管することができないという製品特性も有利に働いているのかもしれません。
その点、鉄筋業界の事情は対照的で、異形棒鋼などの建設用鋼材は主に鉄スクラップを電気で溶かす電炉でつくります。経済産業省の生産動態統計で計算すると、国内の電炉の生産能力は2月時点で年産3800万トン程度でこの10年間ほとんど変わっていない状況です。中小規模のメーカーが乱立し、これまで統廃合が進んでこなかったこともここにきて価格交渉の壁として大きく左右しています。
日本鉄鋼連盟によると、鉄筋を中心とする小形棒鋼の在庫量を月間の出荷で割った在庫率は4月時点で118%で、80%ほどだった2022年度から40ポイント近く上がってしまっているそうです。
需要が弱いなかで在庫が高止まりし、メーカーや流通事業者が注文をかき集めるために値下げ販売を迫られる構図になってきています。メーカー側としても、電炉は高炉に比べ生産調整がしやすいとはいえ、あまり稼働を落とすとコストに占める固定費の比率が上がるため一定の生産は続けざるを得ないのも生産を止められない大きな要因のようです。鉄筋は大規模な在庫を抱える流通事業者が限られ、工場から工事現場に直接届ける必要があります。「地産地消」の色が強いのは生コンと同じというわけです。ただ生コンと違い日持ちするため遠くまで運ぶこともでき、最近は他地域から安価な製品をもってくる同業者もいたりと価格下落の引き金にもなっているようです。
減っていく需要を奪い合って販売競争に陥る鉄筋業界と、これまでの生産集約で値上げ力を保ってきた生コン業界ですが、皮肉にも生コン側からは鉄筋が受注競争で値下がりしているおかげで、予算に余裕が生まれたゼネコンが生コンの値上げを受け入れやすくなっているのかもしれません。
とはいえ、ビルやマンションを建設する上で両者もと必要不可欠な存在に変わりはありません。今後も、需給バランスからくる価格交渉は最終的に販売価格へと転化されますので注意して見ていかなければならないです。
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