修繕積立金問題にメス!国交相が新指針発表
以前より、この修繕積立金問題については各メディアでも取り上げられています。私も前職のデベロッパー時代に新築マンションを購入検討しているお客様から修繕積立計画について質問を受けることが多々ありました。売主側も買主側も双方心理的には金額の低い設定の方が、購入促進につながるわけですが、実際は先々ブーメランのように自分に返ってくることを考えれば多少高くとも堅い積立金額に設定しておくことで修繕費が積立金を超過することもありません。
実際、既存マンションでは実績から得た正確なデータがない中で、長期修繕計画を組み「修繕積立金」を設定していたマンションも少なくなく、国土交通省はこうしたマンションの修繕積立金を巡り、積み立て途中での過度な引き上げにつながらないよう目安を設けることを発表しました。負担金の増額幅が大きすぎて支払いが困難になるケースが生じているため、引き上げ幅に一定の制限をかけ、管理組合に計画的な積み立てを促すことが主旨となります。
管理組合が修繕計画をつくる際に参考にする国交省の指針を改めるようで、マンションの規模ごとに積立額の基準を示すガイドラインなどにも負担金の目安を盛り込む方針だそうです。指針に強制力はないものの、ほとんどの管理組合は指針をもとに計画を立てているのが実態です。一般的なマンションは築年数の経過に伴い、壁面や柱などを大規模に修繕工事します。現在、多くのマンションで修繕のための積立金の増額幅が大きすぎて住民合意ができないトラブルが相次いだことで問題定義されています。そもそも販売時に説明していた長期修繕計画が成り立っていないということに問題があります。
データによると、2001年に竣工したあるマンションでは計画当初に比べ、最終段階で積立金が5.3倍になる徴収計画をたてているものもあるそうで、2013年に管理組合の総会で値上げを決めようとしたところ、一部から強い反対を受けて断念し、資金不足で修繕工事は延期されるといった事例もあります。国交省によると、計画当初から最終年までの増額幅は平均3.6倍で、なかには10倍を超えるマンションもあるそうです。
国交省が5年に1度実施するマンション総合調査では、2018年度に修繕計画に対して積立金が不足するマンションは34.8%に上り、前回調査の2013年度の16%から倍増しています。足元では資材費や人件費の上昇でさらに増えている可能性があり今後、社会情勢や為替如何では更なる上昇も考えられます。
古いマンションほど修繕積立金などの滞納割合が高く、1969年以前に竣工したマンションのうち42.9%で滞納があります。これは、2015年以降の物件よりも27.5ポイント高い数字です。計画通り集金できなければ、修繕工事の遅延などが相次ぐ恐れがあり老朽化したマンションを放置する状態になってしまいます。今後、国交省は積立金の引き上げ幅について管理組合の決議が成立した範囲などを調査し、妥当な水準を探るとのことです。その他、マンション管理に地方自治体がお墨付きを与える制度の基準も見直すようです。負担金の上げ幅を適正に抑えているかを認定の審査項目にする案などが出てきています。
政府は2022年4月、修繕計画や積立金の状況を自治体が確認する仕組みを設けました。認定を受けた築20年以上の建物は居住者の固定資産税が軽減され、計画的な積み立てに向けて新築物件を対象に加えることも検討しているとのことです。国交省は10月末にも有識者による作業部会を設置し、2024年夏までに対策をまとめる方針です。
また、修繕積立金が不足するのは積立金の徴収方法に原因があるとも指摘されています。徴収法は修繕計画に基づいて新築取得時に「修繕積立基金」としてまとまった金額を納めてもらい、そこに毎月同じ額を徴収する「均等積立」と、一定年数が経過したタイミングで段階的に額を増やす「段階増額積立」の2つが主流です。国交省は管理組合の決議がいらない均等積立を推奨してきた過去があります。
これに反して2010年以降に完成した築年数が浅い物件では6割強が増額積立というデータになっており、分譲時に当面の経費を少なく見せることが目的とされていました。建物の老朽化が相次げば影響は深刻ですし、外壁の剥落や鉄筋の腐食が進むと居住環境を維持できず、周辺の安全も保てなくなります。さらに、築古になればなるほど中古市場としても流通しにくくなるデメリットもあります。この増額システムにより、マンションを売却する際のタイミングとしても、積立金が増額する間際に売却するといった目安にもなってしまっています。
今後、マンションの管理組合としても区分所有者一人一人の主体性意識の向上を図るうえでも新たな運用方法を検討し、改修工事の滞った老朽化したマンションだらけになってしまわぬ様、新築時当初の修繕計画を維持出来るような積立金制度構築を考えていくことが急務となっています。
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