マンションの維持管理コストについて考える
エリア別では、首都圏の築10年物件は2万7746円で、2012年に比べて30%増えています。近畿圏は同28%高い2万332円、中部圏は同36%高い2万2025円でした。
そもそも、マンションの修繕費用はデベロッパーなどが販売時に試算して長期修繕計画という名の元、逆算して区分所有者から月額徴収しています(徴収方法はマンションにより違います)。将来の正確な見積もりは難しいため、実態とかけ離れることも多いのが現状で、今のような深刻な人手不足で人件費が膨らむケースも、管理費が上昇する要因になります。そして、エネルギーの高騰や資材高による工事費の上昇が修繕積立金を押し上げています。計画期間については新築だと、どこも完成後30年間の計画がほとんどとなっています。さすがに、30年間ともなると先々の地政学や経済状況も読めない為、難しい計画設計にはなってしまいます。さらには、修繕費用の見積もり等に関しても、「都度見直し」とどこの販売会社もうたっていますが、竣工時当初の工事単価で設計すること自体、概算とはいえ無理があります。
計画案の前提条件としては以下のような内容のもと策定されます。
【修繕項目】
一定の周期で行う計画修繕のうち、修繕積立金会計より支出される項目を対象とし、修繕時期、修繕仕様の設定が困難な緊急修繕、一般会計の小修繕費等より支出されることが多い項目、また占有部分は原則対象外。
▫️建築項目:防水・外壁・金属等塗装・金属建具・外構など
▫️設備項目:給水・排水・ガス・空調・換気・電気・情報設備・防犯防災設備・消防用設備・昇降機・駐車場など
【修繕時期】
一定周期(5年・10年・15年・20年・25年・30年など)で設定、各販売会社の過去販売実績によるデータ参照
【修繕仕様】
劣化した建築・設備の性能や機能を、新築時または前回改修時と同等水準まで回復させる修繕を基本としていおり、建替および耐震改修等の改良については、管理組合内の合意が必要(原則対象外)。
【修繕金額】
修繕金額は数量に単価を乗じて、概算金額を算出。数量は竣工図書・現地調査等を基本とし積算。諸経費は各項目に計上し算出。
2018年度の国土交通省のマンション総合調査によると、35%のマンションで積立額が長期修繕計画を下回っているそうです。放置すると十分な修繕が行えず、水漏れなどで老朽化が早まってしまう為、現在多くのマンションで修繕工事の延期や、積立金の値上げといった対策がとられています。
こうした既存マンションのデータからも、近年の新築マンションではあらかじめ管理費・修繕積立金の設定額も増額して設計はしているようです。2022年の東京23区の合計額は前年比5%増の3万829円でした。首都圏は同8%高の2万7494円で、23区を含む東京都全体が同5%高の2万9977円、神奈川県が10%高の2万4968円、埼玉県が10%高い2万4204円、千葉県が3%高の2万2045円という結果でした。
タワーマンションをはじめとした大規模マンションともなると、シアタールームの設置やコンシェルジュの配置など、充実したサービス内容(共用施設など)を設けることで販売促進にもなるため、管理費が膨らむ要因は多いです。修繕積立金も中古同様に工事費用の高騰で上昇傾向にあります。
今回のような、管理維持コストの不足問題で表面化しているのはいずれも小規模な築古マンションではありますが、今後築浅(築10年以内)のマンションも管理組合の取り組み方に注目があつまるのは必然かと思います。実際、都内の大規模タワーマンションでは管理総会で決議する内容も会社の経営会議さながらで、空いたスペースをキッチンカーに提供し有効活用することで外部貸し賃料を得て、管理費の補充金に充当するなど、まさに住民一人ひとりの運営意識向上へとつながってきています。
そうした中、先日のブログでも紹介しましたが、こうした問題に備えるためにも国が介入してガイドラインを設ける試みには大賛成です。
※過去の関連記事はコチラからご参照下さい↓
こうした難しい問題はあるものの立地や生活環境の面で、マンション人気は衰えるどころか加熱気味です。今後、管理維持コスト問題への改善策が見出せればまた更なる需要へとつながっていくと思います。前段でご紹介したような、管理組合の新たな試みや成功事例などがどんどん定着すれば全国的にも運営手法としてのノウハウになるので、他のマンションも採用しやすくなると思います。
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