開発事業の光と影
近年、都心での大規模な開発が盛んです。開発事業により街全体の経済効果や利便性の向上に繋がる一方様々な弊害もあります。人口増大により渋滞や混雑に繋がり、インフラ面では交通機関はもちろん、教育・医療施設の整備にも追われます。その他、開発にかからなかったエリアとの調和の差や土地の取得を断念せざるを得ず歪な土地だけが残ってしまうケースもあります。そして、開発された地域で一番心配されるのが残された古い建物などによる天災時の被害です。
開発事業の盛んなエリアとして「中央区月島」があります。もんじゃストリートなどが有名なエリアで、下町の情緒あふれる街並みと開発により建設されたタワーマンションのコントラストが今や月島の新たな「顔」になっています。この月島エリアには昔から建つ木造住宅が1本路地を入ったところに所狭しと立ち並んでいます。こうした木造住宅密集エリアは中央区に実は多く、月島以外だと佃や築地、人形町などにもまだ残っています。その中には、空き家も多く老朽化した木造住宅は地震が起きた際の火災の原因にもなるため地方自治体としても開発事業により新しく生まれ変わる様、容積の緩和措置などで促してきた経緯があります。しかし、ここ最近の建築資材費高騰などで各社デベロッパーも採算が合わなくなってきており、開発頼りというわけにもいかなくなってきている現状があります。そんな中、中央区ではそうした開発から取り残された古い木造住宅の買取を検討しているそうです。買取った住宅は防火設備などを備えた防災公園に利用し、火災が発生した際に密集した木造住宅の延焼を抑える効果を生む計画にシフトしているそうです。月島の自治体も、今後はマンション建設に反対の声が多く、こうした公園転用の動きが今後もっと強くなりそうです。
また、都心だけでなく地方においても開発事業は全国的に増えてきています。その背景には急増する空き家や空き地が荒廃して、周辺に悪影響を及ぼす事例が各地で起きていることも要因の一つです。人口減少で住宅の居住者がいなくなったことが主因で、そうした土地の活用を促していかなくてはなりません。
そんな中、国土交通省は、商業施設やマンションと近隣の空き地を一体開発すれば、開発事業者や空き地の所有者が優遇策を受けられるようにする施策を打ち出しました。内容としては、容積率の緩和や固定資産税の減免を検討します。全国で急増する空き地を緑地などに転用して有効活用し、市街地や住宅地の活性化につなげる狙いがあります。新たな優遇策の対象とするのは所有者が明確な空き地で、一体での開発に応じた場合に空き地側の固定資産税を優遇することで、空き地の緑地や農園などへの転用を促すようです。
商業施設やマンションを開発する側には建物の容積率を緩和し収益性でのメリットを持たせるようです。施設と空き地の距離がある程度離れていても、空き地を事実上施設の敷地とみなすようにする方向で、事業者にとってより大規模な開発が可能となります。今後、国交省が詳細を詰め、早ければ2025年の通常国会に関連法案を提出し、早期の実施をめざす模様で、政府・与党はこれまで所有者が不明な土地についての法整備を進めてきたものの、所有者が明確な空き地に関しての対応は遅れていました。
事業を推し進めるため、空き地の所有者と取得を希望する事業者の橋渡し役として、空き地の利活用や管理を担う組織を「土地利用・管理円滑化法人」として法的に位置づけることも検討していることから本気度が伺えます。総務省の住宅・土地統計調査によると、2018年に世帯が保有する空き地は全国で1364㎢で、2008年比で2倍超にまで膨らんでいます。この規模は東京都の面積(およそ2200㎢)の6割程度に相当します。社会問題として無視出来ないレベルにきています。
近年は郊外地域で住宅の空き地を資材や廃品置き場に変える動きも見られるますが、こうした事例は周囲の生活環境の悪化につながる恐れがあります。国交省は適正な利用に繋げるため、売買など土地取引の情報を事前に地方自治体に届け出なければならない仕組みも検討しています。
「都心の開発」「地方の開発」それぞれに問題はありますが、本日ご紹介したように行政としてもより良い街づくりを目指していることは間違いありません。今までは、容積率を緩和し効率よく建築することで開発事業のメリットを享受してきました。しかし、我々が生きていかなくてはならない未来は少子化に伴う、人口減少問題もありますので、ただ安直に高層ビルやマンションを作るのではなく、空き地や空き家を活かした計画的な開発事業が求められる時代へ突入しています。
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