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改めて考えるCRE戦略のあり方とは?

企業不動産

山田 恵二

筆者 山田 恵二

不動産に関する事なら何でもご相談下さい。
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自身の購入や売却といった実際の取引経験も交えてお客様一人一人に合わせたご提案を心がけております。

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本日は、昨今の不動産市況を読み解くうえで大手企業が不動産運用をどのように考えているのかについてご紹介したいと思います。

企業価値を高めるための手法には、事業の収益性の向上、投資効率の最適化、財務状況の見直し、無形資産の把握・活用などがあります。とりわけ投資効率の最適化を図る上では、不動産の活用は重要なポイントです。昨今、保有している不動産の活用や投資を経営戦略として導入する企業が増えており、CRE戦略は大切なテーマといえます。

「CRE」は1960年代に米国で発祥しました。「Corporate Real Estate」の略で直訳すれば企業不動産という意味になります。企業が保有している不動産のことを指し、事業を行うために必要となるオフィスや工場、倉庫などの不動産のほか、保養所や社宅、福利厚生施設、遊休地などもこれにあたります。CRE戦略とはこうした不動産を効果的に活用することで、企業価値の向上を図るための中長期的な経営戦略です。具体的なCRE戦略としては、現オフィスを見直し、余剰になったオフィスを第三者に貸し出したり、遊休地の活用として賃貸住宅や高齢者施設などを建設することで長期安定の賃料収入を確保する、などが挙げられます。CRE戦略が注目されるようになったのは、2008年に国土交通省が「CRE戦略実践のためのガイドライン」を出したことがきっかけとされています。ガイドラインでは「CRE戦略は企業不動産について、『企業価値向上』の観点から経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方である」と定義しています。この考え方が徐々に広まり、今では収益性の向上のために自社で保有する不動産を有効活用したり、新たに不動産を取得するという考え方が浸透しつつあります。

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そんな中、西武ホールディングス(以降、HD)が不動産事業に活路を見いだすべく話題になっています。物件の含み益を重視し長期保有を前提とする事業モデルから、資産効率の低い物件を売って別の不動産開発に再投資する「回転型ビジネス」にシフトする考えで、低迷する資本効率の引き上げにつながるか注目が集まります。

東京都千代田区の赤坂プリンスホテル跡地に建つ、西武HDの複合ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」は約1040億円を投じて再開発し、2016年に開業した旗艦ビルです。今、年内の売却に向けて投資ファンドなどと交渉を進めており、売却額は4000億円規模とみられています。西武HDは売却で得た資金を東京・高輪や品川などの再開発に充てる考えです。他にも本社が入る豊島区のオフィスビル「ダイヤゲート池袋」などを売却する方針で、2025年度にも具体的な検討に着手する模様です。西武HDは2022~2023年に港区の「ザ・プリンスパークタワー東京」や新潟県で有名な「苗場プリンスホテル」など26施設を1237億円で売却し話題になったばかりです。

同社は「キャピタルリサイクル」という方針を掲げており、保有物件を売却して含み益を顕在化させ、得た資金を別の不動産開発に再投資する方向に大きくシフトしています。注目すべきは、売却により得たキャピタルを不動産の再投資へ繋げる方針を掲げている点です。不動産事業には2036年3月期までの12年間で約9100億円を投じる予定とのことで、西武HDの総投資額の半分にあたります。都内の高輪・品川・芝公園エリア、新宿・高田馬場エリア、軽井沢・箱根・富良野・日光などのリゾート地の3つを重点投資先に定めているそうです。

投資先の選定も円安によるインバウンド効果を見越した戦略と言えます。

こうした背景には資本効率の低迷があります。自己資本利益率(ROE)は不動産を比較的多く保有している企業の中でも、新型コロナウイルス禍以降回復が鈍く、前期は6.8%と京浜急行電鉄(26.8%)や京成電鉄(20.7%)、小田急電鉄(19.3%)などを下回り、関東の私鉄大手で最低となっていたことが大きな判断材料となっています。

西武HDは株主資本コストを7.2%と設定していて、ROEは2020年3月期以降、特別利益が膨らんだ2023年3月期を除いてこの水準を超えられていません。これは企業価値を毀損していることを意味しており、当面は利益率を引き上げることが命題になっています。もっとも不動産の回転型ビジネスを持続的に拡大するための原資はまだ十分ではないです。オフィスビルや商業施設などの「賃貸等不動産」の前期末残高は3504億円で時価は6875億円で含み益は3371億円という数字です。

一方、競合他社を見てみると大手の東急は同様に5786億円で時価は1兆2156億円、含み益は6369億円となっており、西武HDが持つ土地は多くが東京以外で、東京や神奈川に資産評価の高い不動産を多く持つ東急と対照的という結果になっています。

同じく不動産を多く保有する他社と比較しても、西武HDは保有不動産の付加価値を高めることが大きな企業モチベーションになっています。今月上旬には2025年3月期の連結純利益が前期比3.1倍の840億円と、9年ぶりの最高益になる見通しだと発表した西武HDですが、企業再編に伴う負ののれんの影響が大きく、中長期で成長軌道を取り戻したと見るのはまだ早計のようにも感じます。株式市場を見ていても、現在の西武HD株価は低迷しており株主還元への期待感も今回の不動産リサイクルでどう評価されるかがポイントになりそうです。不動産市場も、こうした大手企業による大規模再開発が全体の不動産価値を底上げすることにも直結するので引き続き注目していきたいと思います。

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