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企業不動産の盲点とは⁉︎

企業不動産

山田 恵二

筆者 山田 恵二

不動産に関する事なら何でもご相談下さい。
特に、マンションに関しては長く扱ってきた経験もございますので将来のトレンドを見据えたご提案はもちろん、住宅ローンや税金に関しても細かくご説明致します。
自身の購入や売却といった実際の取引経験も交えてお客様一人一人に合わせたご提案を心がけております。

皆様、いつも弊社SANSHIN picksをご覧頂き誠に有難うございます!

本日は、企業不動産の話題についてご紹介したいと思います。この話題については、当SANSHIN picks内でも過去何度か取り上げて参りましたがその都度反響が多かったので皆様の関心の高さがうかがえます。今まで取り上げていた企業不動産の話題では、どちらかというとその所有企業の財政立て直し活用したり、所有用地の再活用(再開発)にフォーカスを当ててご紹介してきました。しかし、今回は逆に株式会社であるが故の「株主」からのマイナス面での評価に焦点をあてた話題です。

それは、アクティビスト(物言う株主)の新しい攻め手として企業が所有している「不動産」の有効活用を促す提言が話題です。本業が振るわない企業に対し、都内一等地などに保有する不動産から上がる収益に経営陣が甘えて非効率な経営が常態化している、とアクティビストは批判しており、不動産事業の切り離しなど経営の核心に迫る要求もあったりと、企業は競争戦略の一層の明確化が求められてきています。

今、株式市場で不動産事業の行方に関心が集まる企業はサッポロホールディングス(以降、HD)とフジメディアホールディングスです。現在、サッポロHDにはシンガポールの投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズが介入しています。3Dは公開キャンペーンでビール事業の低収益性をやり玉にあげ、都内の恵比寿エリアなどに優良不動産を多く抱えていることが経営の甘えを生んでいる、と批判しました。他の株主に向け、不動産子会社を分離上場(スピンオフ)する改善策を示し、協力を訴えたのも各メディアで取り上げられ話題になりました。

これに対しサッポロHDは不動産事業に外部資本を導入するためのアイデア募集を昨年秋に開始し、外部からの資本を受け入れるなどして不動産事業を効率化する方針を固めています。不動産デベロッパーなどが応募し、サッポロHDは現在、内容を精査している段階だそうです。これを好感し株価は昨年から上げ足を速め、現在は高値圏に浮上しており、まさしく企業コンサルティング的な役割を果たしています。この20年間、同社の株価リターンは同業の朝日グループホールディングスやキリンホールディングスを大幅に下回ってきた経緯があります。不動産の利益が本業の低収益をカバーしているものの、不動産事業の成長率は横ばい圏で、不動産専業大手に大きく劣っているのが事実です。こうして考えると、もともとサッポロ経営陣が一番やりたいことは本業のビール造りのはずで、ノウハウが足りない不動産事業は切り離すか、大手不動産デベロッパーの出資を受け入れ、ビールに専念することこそ最大の企業防衛になるというシンプルな話ではあります。

また、スキャンダルばかりが目立ち、取締役員の人選に注目が集まっているフジ・メディアHDも、都内を中心に優良な不動産物件を多く持つ企業として有名です。米投資ファンドのダルトン・インベストメンツは4月中旬、取締役12人の選任を求める株主提案を出し、その中で政策保有株式の解消や不動産事業の切り離しを求めています。日本のテレビメディアは放送法による外資規制で守られており、フジ・メディアHDのように傘下に放送局を持つ認定放送持ち株会社は、外国人投資家による株式取得は20%未満とする上限があります。ですので、放送の公共性を踏まえた規制が隠れみのになり、不動産までが外圧から守られる形になっています。ここに目をつけたダルトンは「放送と不動産事業は関連性がなく、放送・メディア事業から切り離し、それぞれの事業がより厳しい環境で成長できるようにすることが必要」と主張しています。

では、なぜそこまでアクティビストが普通の事業法人が手がける不動産ビジネスに否定的なのでしょうか?

それは、経営効率の観点で評価しにくいためです。以前の当SANSHIN picks内でも取り上げましたが、現在の都心オフィスビルの投資利回りは3%前後になっており、一般に8%が目安とされる資本コストを大きく下回る内容になっています。

大手企業が所有している一等地の土地は昨今用地取得に苦戦しているデベロッパー側からしてみれば宝の持ち腐れ状態です。資本市場から調達する上場会社である限り、本業で資本コストを上回る8%以上の利益を上げてほしいと株主・投資家は思っているのは当然で、それが本業ではないからという言い訳は株主には通用しないというわけです。

その中でも、フジ・メディアHDは不動産事業に特化した「サンケイビル株式会社」を傘下にしており東京・お台場地区の本社ビルのほか、千代田区大手町など一等地にオフィスビルを構え、マンション、ホテル、リゾートなども手がけています。マンションは「ルフォン」シリーズとして首都圏にも多く点在しています。オフィスビルには多くのグループ会社が入居しているものの、グループ外の第三者に貸し出せばより高い収益が見込める、と指摘されています。

その他、インフラ企業でもある東京ガスには、米ヘッジファンド、エリオット・インベストメント・マネジメントが不動産ポートフォリオの見直しを迫っています。東京ガスの2025年3月期決算は不動産ビジネスの「都市ビジネス」の売上高が778億円で、営業損益は234億円の黒字で、かなりの高収益ではありますが、実態は不動産の切り売りでしのいでいる面が大きいと言われいています。ゴールドマン・サックスによれば、東京ガスの保有不動産含み益は4000億円を優に超えるのに対し、直近の自己資本利益率(ROE)は4.3%とライバルの大阪ガス(8.2%)より大きく見劣りしています。エリオットは不動産の売却や収益化による資本効率改善と株主還元を求めています。

こうしたアクティビスト達の近年の動きは、ガバナンス改革とも呼ばれ、日本企業を買収の脅威から守ってきた政策保有株、株式持ち合いなどの慣行が次々と切り崩され、上場企業は稼ぐ力や資本効率の向上へと大きく潮目を迎えています。従来、アクティビストは株価に直結する財務面の命題として、バランスシートにある余剰資産・キャッシュや政策保有株の改善要請はするものの、これが一巡すれば本業との関係が薄く、低採算の不動産に関心が移ってきておりさらに深いところにもメスを入れてきています。

とはいえ今までも過去の株主アクティビズムとして、活用されていない不動産をやり玉に挙げているケースもありましたが、今回興味深いのは少額とはいえ利益を出している不動産にまで「ものいい」が入った点です。土地持ち企業は代々受け継いできた優良物件の上にあぐらをかけなくなるばかりか、一等地に不動産を保有していることがむしろアダとなってアクティビストを招き寄せる恐れがあることを改めて認識した事例でした。

良くも悪くも、今回取り上げたの一部大手企業の中には「優良不動産」という盤石な基盤に対しあぐらをかき過ぎてしまい再評価がおざなりになってしまった結果なのかもしれません。それにより、新たなイノベーションからも遠ざかり、ひいては日本経済の後退にも繋がってしまいます。海外のアクティビストによる提言はこうした問題を解消すべく物言わぬ株主が甘やかしていた歴史にメスをいれてくれたのかもしれません。最終的には、方法は様々ですがお互いの利害は一致していますので、お互いが得をするためと考えれば当然の協議であり有益かつシンプルな話ですね。



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