税評価の考え方に新たな判例
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本日は、固定資産税の算定評価について興味深い最高裁判決が下されましたのでその話題をご紹介したいと思います。
判例の内容としては、低層階と上層階で構造が異なる高層建築を巡り、固定資産税評価額の算定方法の妥当性が争われた3件の訴訟で、最高裁第2小法廷は先日、自治体側が採用した所有者側に不利な算定方法を「適法」とする判決を言い渡しました。
この問題、難しいのは裁量論の話だとすると理解できるのですが、評価基準の解釈の話だとすると明確ではない点です。
結果として、評価額を「不合理」として取り消した2件の高裁判決が破棄され、全ての訴訟で納税者側の敗訴が確定しました。裁判官4人のうち3人の多数意見でしたが、草野耕一裁判官は、評価を「違法」とする反対意見を付け、解釈によって判断が分かれるという結末でした。3件の訴訟はいずれも三菱UFJ信託銀行が起こしました。大阪市と広島市に所有するホテルやオフィスビルなどの2018年度の評価額について、2市が不合理な方法に基づき過大に算出したとして評価の取り消しを求めていた訴訟案件で、当時一部メディアでは取り上げられており動向に注目していました。
そもそも、固定資産税は土地と建物の評価額に基づき算定されます。建物の評価額は築年数に応じて下がり、減額率は採用している構造で決まります。「鉄骨鉄筋コンクリート造」など耐用年数の長い構造ほど評価額が下がりにくい設定となっています。
今回、問題のホテルやオフィスビルはいずれも低層階は耐用年数が長い構造を採用しており、上層階は耐用年数が短い構造の「複合構造家屋」と呼ばれる建物だったことが通常とは違う点でした。複合構造家屋の場合、自治体側が「主たる構造」を判断し、一棟全体がその構造で建てられたとみなして評価額を算定する方法が主流です。ただ、統一ルールはなく、訴訟では同行が所有するホテルやオフィスビルの「主たる構造」をどう判断するかが最大の争点でした。
具体的には、大阪市と広島市は建物を支える低層階の構造を「主たる構造」とみなす「低層階方式」に基づき税額を算定しており、これに対して同行側は建物全体で最も大きな床面積を占める構造で判断する「床面積方式」を採用すべきだと主張したことで訴訟になっていました。2つの方式で評価額に約3億9千万〜約11億4千万円の開きがあったということで流石に今後のことも踏まえ「待った!」が言いたくなるのも理解できます。
気になる判決理由ですが、第2小法廷は判決理由で「家屋の荷重などは、最終的に低層階を構成する構造が負担することになる」と指摘し、今回の建物では、低層階の耐用年数が経過しない限り、他の部分は補修などによって建物として維持できるとし、低層階方式を採用した2市の判断は「合理性を欠くとは言えず、許容されるものだ」と結論付けました。
複合構造家屋はホテルやオフィスビルなどの高層建築に多く、一般的に低層階は「鉄骨鉄筋コンクリート造」など耐用年数が長い構造、上層階は「鉄骨造」など比較的耐用年数が短い構造が採用されます。これは、コスト面もそうですが荷重計算上も軽量化が求められる複合の高層建築では違和感の無い考え方です。そのため低層階方式は床面積方式に比べ、築年数に応じた評価額の減少幅が小さく納税者にとって不利に働いてしまうわけです。
かつては低層階方式を採用する自治体が一定数存在したが、現在は床面積方式が一般的となっており、自治体の中には最近建てられた建物には同方式を適用しつつ、過去の建物は低層階方式で評価しているケースも多いです。下級審の司法判断は真っ二つに割れていたそうで、2023年1月の大阪高裁判決は低層階方式について「上層階の重さを支える低層階こそが構造の要と考えることには合理性がある」と認めており、他方、2022年12月の大阪高裁判決と2023年3月の広島高裁判決は評価を違法として取り消していました。専門家の見解としても、納税者にとって不利な算定方法であっても、今のルールの下では不合理とまでは言えないと追認した形だとの解釈でしたが、建築のあり方も時代に応じて変わってきているので実態に即した評価基準になるよう、抜本的な見直しをする段階に来ているのではないでしょうか。実際、同行側も構造ごとに補正率を定めた告示の趣旨に沿わないと反論していました。
この問題は、対岸の火事ではないと思います。
今回ご紹介した判例は、規模でこそ大規模な建物なので納税額にも相当な差額が生じていましたが根本的に評価基準の曖昧さが各自治体でも明らかなことが最高裁判決を見ても感じました。この判決が、今後同様の事案にどのような影響を与えていくのか大きな論点になりそうです。
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